抗がん剤の副作用!メソトレキセートとイホマイドの体験と解説

私の骨肉腫の治療で使用した抗がん剤は、シスプラチンとアドリアシンだけではありませんでした。

実は、メソトレキセートという強敵もいたんです。

そしてそのほかに、骨肉腫の治療には、超強敵のイホマイドという抗がん剤を使用して治療することがあります。

 

抗がん剤治療中、主治医の先生は、

 

「どう〜?」

 

なんて、笑顔で回診に来てくれますが、笑顔を返す余裕は皆無です。

 

そして、身の回りのことをしてくれる看護師さんに、たったひとことの

 

「ありがとう。」

 

を返すこともできません。

 

ベッドに倒れこんで、吐いて、トイレに這っていく。

 

ひたすら、このくりかえしです。

 

できることはただひとつ、時間の経過を待つのみです。

 

 

今回も、私の治療の経験をおりまぜながら、メソトレキセートとイホマイドについて、わかりやすく解説するとともに、実際に治療してみた感想もお話しします。

 

 

メソトレキセートについて

メソトレキセートは「メソ」って呼ばれます。

メソトレキセートはですね、とっても優しい顔をして近づいて来るんです。

そして、散々こちらのことを油断させていおて、打ち解けられそうだなーなんて思った頃に、噛み付いてきます。

あくまでも、”私は”ですが、メソトレキセートの治療でボロぞうきんのようになりました・・・

 

一体なぜ、私がそんなことになったのか、メソトレキセートという抗がん剤について、くわしく解説していきます。

 

メソトレキセートってどんな抗がん剤?

 

ちょっとむずかしいかもしれませんが、なるべくわかりやすくお話ししていきますね。

まず、人間の身体にとって大切な栄養素って、たくさんありますよね。

その一つに、葉酸(ようさん)という栄養素があります。

でも実は、葉酸って、体内で作ることができない栄養素なんです。

じゃあ、どうやって調達するか。

 

 

食べ物から摂取しているんです。

 

 

じゃあ、葉酸ってなんで必要なの?って思いますよね。

 

 

葉酸は、細胞分裂やDNAをコピーするときに必要なんです。

つまり、血液を作る時も、傷を治す時も葉酸が必要になってきます。

 

 

ここまで、大丈夫ですか?

説明の半分まで来ましたよ。

で、ここからが大切です。

 

 

DNAをコピーしたり細胞分裂するときに葉酸を使ってるのは、正常な細胞だけだと思いますか?

 

 

いやいやいやいや、がん細胞も葉酸を使ってるんです。

 

 

そして、なんと、朗報です!

メソトレキセートという抗がん剤は、葉酸と構造がとっても似てるんです。

でも、ニセモノなんですよ。

ただ、似てるっていうだけなので、葉酸の役割は果たせません。

 

 

まず、メソトレキセートを投与すると、

 

「葉酸きたぞー!!!」

 

って、身体が間違えて体内に取り込みます。

 

すると、がん細胞たちが、

 

「よっしゃ!DNAコピーして仲間どんどん増やすぜ!!!」

 

「コピー!・・・・・。」

 

「コピー!・・・・・。」

 

「・・・・・えっ!?なんでっ!?」

 

 

そう、コピーできません。

だって、ニセモノだから。

特にがん細胞は増殖するスピードが早いので、この作戦はうってつけです。

ニセモノのせいで、仲間が増やせないんです。

つまり、細胞が増殖できないんです。

すると、死んでしまうんです。

 

でも、先ほども説明したとおり、葉酸を必要としているのは正常な細胞もおなじですよね?

 

つまり、正常な細胞にも葉酸が行き渡らなくなるんです。

 

すると、体内で葉酸が枯渇します。

でも、私たちって、葉酸なくして生きていけないんです。

なので、まずはじめに、がん細胞をとりあえずやっつけるだけやっつけます。

そして、やっつけたところで、すかさずロイコボリンという薬で葉酸を投入して正常細胞を助けるんです。

 

つまり、ロイコボリンは解毒剤です。

 

なんとなくわかったでしょうか??

 

ちなみに、葉酸がなくなると本気で、本気で、命に関わります。

 

 

ナースセンターのカウンターに周知徹底のために貼ってあった、看護師さんたち用のメモに、

 

山村さん、ロイコボリン忘れると致命的!!!

 

って赤字で書いて貼ってあったんです。

見つけた時、二度見しました。

 

「え?私、ロイコボリン忘れられたら致命的なのっっ!?」

 

もうそれからは、気が気じゃありません。

ロイコボリンの時間が近づいてくると時計しか見てなかったです。

もし、担当看護師さんが、ロイコボリンタイムに1分でも遅れようもんならナースコールひたすら押しました・・・笑

ちょっとくらい遅れても、大丈夫らしいですけどね。

そして、その二度見したメモはコピーしてもらいました。

↓ 当時のものです。

メソトレキソート救済措置忘れると致命的!!!

 

致命的!!!

って・・・

 

怖すぎるやんっっ!!!

 

さて、ここまで説明してきたメソトレキセートですが、骨肉腫の治療だけに使われる抗がん剤ではありません。

  • 骨肉腫をはじめとする悪性骨腫瘍
  • 白血病
  • 乳がん
  • 尿路上皮がん
  • 胃がん
  • 絨毛性疾患

などの治療に使用される他に、

  • リウマチ

の治療でも使用されますが、その際は少量の投与です。

 

メソトレキセートの色は、はうっすら黄色です。

私の中では、炭酸の抜けたデカビタCなんですけど・・・余計わかりづらいですかね・・・

私の治療で使用した、アドリアシンのようにおかしな色ではなく、なんだか穏やかそうなやさしそうな表情です。

 

でも、色だけですよ、やさしいのは・・・・・

 

だって、副作用で相当泣きましたから・・・

それでは次に、その副作用について、説明していきますね。

 

メソトレキセートの副作用

まず、さきほど説明したように、メソトレキセートの副作用で一番重大なのは、葉酸が欠乏してしまうことですね。

そして、体内の葉酸が欠乏してしまうことによって細胞分裂ができなくなるので、新陳代謝の早い場所はダメージを受けやすくなります。

細胞分裂の早い場所というと、髪の毛や粘膜は代表的です。

なので、脱毛や口内炎が起きやすいです。

 

そのほかには、吐き気や食欲不振があります。

血液を作る作用がストップします(骨髄抑制)。

不整脈や動悸、心不全を引き起こす心筋障害もあります。

骨髄抑制という副作用によって、免疫力低下・貧血・出血しやすく、出血すると止まりにくくなります。

倦怠感や眠れなくなる作用もあります。

肝機能や腎機能の低下もあります。

 

そして、きわめつけに、メソトレキセートの治療中は、尿が酸性に傾くとメソトレキセートが結晶化してしまい、腎臓が詰まります(!)

なので、食べるものが制限されるんですよ・・・涙

特に、身体が酸性に傾きやすい食べ物は禁止!

代表的なものをあげると、フルーツ・マヨネーズ・ジュースなどは絶対NG!!!

 

治療が始まると、ほとんど食べ物は口にできなかったですが、唯一口にできるかもって思うのがフルーツだったんですね。

そのうえ、吐き気を抑えるとか、気分転換にジュースを口にすることも多かったので、

 

(この規制は・・・・・私に一体どうしろとっ!?)

 

相当辛かったです。

 

尿が酸性に傾かないよう常に監視体制なので、トイレに行くたびに看護師さんの尿pHチェックがあるんです。

そして、尿が酸性に傾かないように、メイロンという薬を点滴から入れて身体がアルカリに傾くようにします。

 

それに加えて、気をつけなければいけないのが、消炎鎮痛剤の使用禁止!

ボルタレンとかポンタールなどなど、メソトレキセートの治療中に鎮痛剤を使用すると、メソトレキセートの血中濃度が高まってしまう作用があるんです。

 

そうなると、どうなるか。

 

メソトレキセートの副作用が出やすくなります。

 

(もうほんとやめて・・・恐ろしすぎる・・・)

 

治療前にきちんと先生や看護師さんから説明があるので大丈夫だと思いますが、メソトレキセートには、今説明して来たような副作用があります。

 

じゃあ、実際私が治療してみての様子をくわしく紹介しますね。

 

 

メソトレキセート、実際に治療してみてどうだった?

メソトレキセートの治療を初めてする前夜、病棟のロビーで同じく抗がん剤治療をしている優しい先輩と会ったので聞いてみたんです。

 

「私、今度はメソトレキセートなんですけど、あれって辛いですか?」

 

って。

そしたら、

 

「大丈夫。あれは全然気持ち悪くならなかったから、楽だよ。」

 

そう、教えてもらって心がすごく軽くなりました。

 

いざ治療が始まってみると、確かに吐き気はほとんどなくって、

 

(これは・・・楽勝かもしれない)

 

と思いました。

 

が、それは間違いだと気づくのに、そう時間はかからなかった・・・

 

治療開始の日から、口内炎を予防する薬(ロイコボリン)でうがいするようにと、先生から指示が出ていたんです。

 

うがいをしたかをチェックする、「うがい表」までありました。

真面目にうがいした結果ですが、なんと!多分、うがいは全く効いてない!

 

余裕余裕って思っていたら、ある日、口の中の粘膜という粘膜が全部口内炎ってレベルの痛みに襲われました。

 

唾を飲み込むことさえ不可能です。

あまりの痛さに、ずっと泣いていました。

顔の横にタオルを引いて、飲み込めない唾液と痛さで溢れてくる涙をずっと垂れ流しです。

 

そして、舌のツブツブが全て脱皮しました・・・

ツブツブが全部なくなったって言えばいいんでしょうか・・・

メソトレキセート1回の治療で、ツブツブが2回脱皮しました・・・

 

「え?うがいしてたのになんで?痛いの?うがいしてなかったんじゃないの?」

 

そう、首をかしげる先生に、腹が立つレベルなんですが、あまりの痛さに返事もできず、首をそっと振るかうなずくかで精一杯って感じです。

当時のうがい表 ↓

 

ロイコボンうがいチェック表

 

落書きだらけですが、治療開始から4日後、相当辛そうな感じです。

 

(なーんだ。やっぱり私、大丈夫じゃん!)

 

って3日目までは思ってましたね。

その直後から泣いてますね。

 

いつものパターンです。

 

(私、大丈夫じゃん!特別!例外!)

 

って思った直後に、先生から言われた通りになるっていうパターンです。

 

でも、先生が、

 

「そんなに痛いの?」

 

って首をかしげていたくらいだし、先輩も楽勝って言ってたから、口内炎で苦しむ人は全員が全員ではないと思うんですけど。

あくまでも、”私の場合は”です。

 

 

そして、何度かお話ししている通り、抗がん剤はがん細胞を殺すけど、猛毒です。

一刻も早く、メソトレキセートを身体から排出させなければならないので点滴の量が半端ありません。

当時の私の点滴スケジュール ↓

 

メソトレキセート点滴スケジュール

 

治療開始初日、かるく見積もっても5リットル以上点滴しています。

それくらい、とにかく早く体外へ出さなければいけないんです。

時間ごとの尿量も決められていて、目標値に達していない場合は夜起こされてトイレに行かされます。

 

 

 

私は、強烈な口内炎の痛みで、脱毛や吐き気は気になりませんでした。

とにかく、メソトレキセートのイメージは口内炎しかありません。

もし、口内炎が出なければメソトレキセートの治療は他の抗がん剤に比べたら、楽な治療じゃないかなぁって思います。

 

さて、次はイホマイドという抗がん剤について説明していきますね。

 

 

イホマイドについて

私はイホマイドを使用しませんでしたが、骨肉腫で使用する抗がん剤のひとつです。

一緒に治療していた闘病友達たちは使用していたので、その治療の様子は間近で見ていて知っているし、辛さも聞いていました。

 

では、イホマイドがどんな抗がん剤なのか説明していきますね。

 

イホマイドってどんな抗がん剤?

イホマイドはDNAと結合して、細胞分裂をできなくさせる働きをします。

がん細胞のDNAの複製を阻止して殺します。

メソトレキセートとおなじく、骨肉腫の治療だけに使われる抗がん剤ではありません。

  • 骨肉腫をはじめとする悪性骨腫瘍
  • 子宮頸がん
  • 前立腺がん
  • 胚細胞腫瘍
  • 小細胞肺がん
  • 悪性リンパ種

などの治療に使用されます。

 

そして、イホマイドは3〜5日くらいかけて投与するという特徴があります。

今まで私が説明してきた、シスプラチン・アドリアシン・メソトレキセートはどれも1日というか、数時間で流し終わってしまう抗がん剤です。

もちろん、抗がん剤を流すのが数時間で終わってしまっても、ひたすら体外に排出するための大量点滴は続行されます。

 

なぜ数日かけて点滴するか?

イホマイドはなぜ数日間かけて投与するのでしょうか?

 

それはですね、短時間で投与してしまうと、イホマイドの血中濃度が非常に高くなってしまうからなんです。

数日間かけて投与し続けるのは、イホマイドの血中濃度を高くしないようにするためです。

血中濃度が高くなるとどうなるのか、それは、のちほど説明する重大な副作用のリスクが高まり非常に危険だからです。

数日間抗がん剤を投与するっていうのは、精神的にもとても負担があると思うんですが、ここは踏ん張りどころです。

 

イホマイドは無色透明です。

骨肉腫の治療に使用して、透明でというとシスプラチンと似ていますが、副作用もシスプラチンと同レベル、いや、それ以上の強烈な副作用が出るのがイホマイドです。

それでは、イホマイドの副作用について説明していきますね。

 

イホマイドの副作用

さきほど説明したので、何やらイホマイドの副作用はすごそうだと思ってらっしゃる方もいると思います。

 

たしかに、イホマイドの副作用はすごいです。

私はイホマイドを使って治療はしませんでしたが、友達たちが使っていたのをリアルタイムで見ていたので、その強烈さは忘れることはできません。

 

なにがすごいって、まず、脱毛がすごいですね。

以前の記事で、シスプラチンとアドリアシンのダブル処方の脱毛について書きましたが、それ以上です。

ドカン!と抜けた後、ずっとずっと細く長く抜け続けるのがシスプラチンとアドリアシン。

イホマイドは1回で全部抜ける。終わり。

まゆげもまつげも抜ける。終わり。

 

そんなイメージです。

 

そして、中枢神経に障害をきたすので、幻覚を見たり、錯乱状態になったり、重症化するとけいれんを起こしたり、昏睡状態におちいったりしてしまいます。

 

友人のジェーンとあっちゃんはいつも意識がハッキリしない上に、変な夢ばかり見ていたので、イホマイド仲間同士でどれだけ変な夢を見たかを報告しあっていました。

 

ちなみに吐き気も半端ないです。

ジェーンもあっちゃんも、もはや動けません。

洗面器に顔を突っ込んだまま、ぐったりです。

でも、ひたすらイホマイドを体外に排出するために排尿しなければならない。

トイレに行くために起き上がるのも必死で、這うようにしてトイレに通わなければなりません。

 

ちなみに、イホマイドが身体に取り込まれるとアクロレインという物質が出るんです。

アクロレインは尿中に排出されるときに尿路粘膜を傷つけたり、膀胱の壁に炎症が起きたりして出血性の膀胱炎を引き起こすことも。

アクロレインとくっついて無毒化してくれるメスナという薬を投与することで予防の効果はあります。

その他の予防策として、尿量が増えれば増えるほど、アクロレインが薄まるので、とにかく水分をたくさん摂って体外に排出すればいいんです。

 

が、治療をやっている側からすると、

 

「は?この吐き気わかってんの?・・・・・飲めるわけないやんっっっ!!!!!」

 

というのが、本音です。

 

イホマイドの代表的な副作用はまだあります。

無精子症や卵巣機能不全です。

これは、とても重大な副作用なので、治療を行うにあたって、主治医の先生からきちんと説明があると思います。

対応策として、精子や卵子を凍結保存することも可能です。

無精子症や卵巣不全はとても辛い副作用ですが、命には代えられない。

そう思います。

 

 

今まで紹介してきた副作用の他にも、抗がん剤治療の副作用のもはや基本パックと言っても過言ではない、

骨髄抑制・倦怠感・不整脈や心不全を引き起こす心筋障害・腎機能や肝機能の低下などの副作用もあります。

 

ひたすらに、つらいです。

 

 

まとめ

長く説明してきたので、メソトレキセートとイホマイドについておさらいしていきましょう。

 

  • メソトレキセートとイホマイド、どちらも骨肉腫をはじめとする様々ながんに使用される。
  • メソトレキセートは黄色、身体が酸性に傾かないよう、食事や服薬に制限がある。
  • メソトレキセートで体内の葉酸が枯渇することによって、口内炎などの症状が出る。
  • メソトレキセートの副作用の救済措置として、ロイコボリンを投与したり、うがいで使用する。
  • イホマイドは無色透明、副作用のリスクをなるべく抑えるために3〜5日間に渡って投与される。
  • イホマイドは吐き気・脱毛・出血性膀胱炎、無精子症・卵巣機能不全などの副作用がある。
  • イホマイドによる出血性膀胱炎の予防として、アクロレインを投与して無毒化をはかる。
  • 無精子症・卵巣機能不全の副作用には、治療開始前に精子凍結・卵子凍結などの選択肢がある。

 

でした。

 

副作用の出方は、使用する抗がん剤の種類や使用量、体質などあるので、個人差があります。

あくまでも、私の抗がん剤治療の経験と、友人たちの治療経験をもとに説明させていただいています。

 

記憶の中だけだった経験を、こうして文字に起こしてみると、

 

(楽な治療って、本当にないんだな。)

 

ってつくづく思います。

 

どれも、つらい。

抗がん剤治療している患者さんは大勢いますが、みんな歯を食いしばって1回1回の治療を乗り越えているんだって思うと、胸がしめつけられます。

 

絶対勝つ。

絶対あきらめない。

しつこく応援します。

 

 

本文中に何度か出てきたシスプラチンとアドリアシンについての解説はこちらを読んでみてくださいね。

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